資金調達 ― 資本性ローン(劣後融資)
資本性ローンは、日本政策金融公庫が力を入れている、無担保・無保証人の融資制度です。資金使途は、創業時や新規事業の開業資金、海外展開、事業承継、企業再建など非常に幅広く設定されています。融資を受ける条件としては、以下の2点を満たしていることが必要です。
①地域経済の活性化にかかる事業を行うこと、
②税務申告を1期以上行っている場合は、原則として所得税等を完納していること
資本性ローンの最大のメリットは、金融機関が融資を行う際の金融審査において、
この制度による調達金額が、「負債」ではなく「自己資本」としてみなされる点です。
※あくまでも金融機関が自己資本と捉えるだけで、会計上は通常の借入と同じく負債に計上されますので、ご注意ください。
なぜ借り入れを行っているのに、金融機関は「負債」ではなく「自己資本」と捉えるのか?
その理由は、資本性ローンの返済時期にあります。
通常、企業は金融機関から融資を受けると、毎月決められた額の元本+利息を返済します。売上が順調に伸びていれば問題ありませんが、もし利益が出ず赤字になっても返済は滞りなく行わなければいけないため、たちまち資金繰りが苦しくなります。
ところが、資本性ローンの返済は一定期間が経過した後(5~15年)の一括償還となります。
仮に3億円の資本性ローンを実行すると、10年後に3億円を一括で返済するまでの間は、金利だけを支払えば良いのです。
また、「劣後」とは「他よりも劣りおくれること」ですが、ここでは「他の負債よりも返済順位が劣る」という意味になります。具体例で考えてみましょう。
A社が、資本性ローンで3,000万円の融資を受けていたとします。
A社の売上は順調だったものの、突然大きな損失が出てしまい、やむなく倒産となってしまいます。会社が倒産すると、税金や従業員の給与、担保などの債権が回収されます。債権回収は優先順位の高いものから行われるのですが、その際に、資本性ローンの残債額は「他の負債よりも返済順位が劣る」ため、他に劣後負債がなければ最後に回収されることになります。
しかし、資本性ローンの順番が回ってくる頃には、もはや回収できるような資産は残っていないので、実質ほとんど回収できません。この性質が、利益に応じて配当を得ることができ、逆に倒産してしまうとほぼ回収できない株式と同様のため、資本性ローンは負債ではあるものの、資本のような性質を持つ=「資本性」ローンと言われるのです。
また、金融機関が融資を行う際の金融審査には、多くの審査基準があり、そのうちのひとつに「自己資本比率」という指標があります。本来、新規融資を受けると自己資本比率が低下しますが、資本性ローンは金融審査上「自己資本」とみなされますので、むしろ自己資本比率が上がります。金融機関も、自己資本比率が高いと経営が安定していると判断しますので、融資が受けやすくなるのです。前述の通り、期間が到来するまでの返済は利息のみとなるため、キャッシュフローが大幅に改善されます!
しかし、利率が高いというデメリットもあります。
利益と貸付期間・償却前の経常利益率によって利率が決定しますが、場合によっては6.0%ほどになることもあります。
そのため、状況に応じて、上手く活用していくことが必要です。たとえば、こんな状況が挙げられます。
①既に債務超過で、自己資本比率がマイナスになっている
②創業して間もないため、多少金利が高くてもキャッシュフローを改善したい
③保証協会の枠が埋まってしまっている
資本性ローンは金融機関にとってリスクが高い商品です。
そのため、融資を受けるには、経営革新等支援機関の作成した『事業計画書』や『資金繰り表』が必要です。さらに、融資実行後も予算と実績の管理、資金繰り表の提出などが求められます。
長尾経営事務所は、経営革新等支援機関に認定されており、これまで100社以上の事業計画書の作成を支援させて頂いております。資本性ローンについて、もっと詳しく知りたい、検討してみたい、とお思いの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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